KLAN2最終報告書:
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第2章 校内LANの管理運営

田辺熊本電波高専教授によって報告された「'95年度 高専LAN調査検討プロジェクト:最終報告書」における「校内LANの管理運営に関する事項」では、維持管理体制、セキュリティ管理、ユーザの管理と教育、という観点から校内LANの管理運営について述べられています。私たちは、当然、こうした観点の延長上で議論、調査、検討を加えてきました。しかしながら、調査し検討すべき事柄は議論が進むに連れて増大し、とても半年や1年間ではまとまりきらないことがわかりました。

高専における校内LAN活用に関する事項は、必然的に高専そのものに関わる問題を数多く内包しています。校内LANの管理運営を議論することは高専そのものの管理運営に関わる問題に触れざるを得ませんでした。私たちは何度も「山田メモ」に言う「教職員の意識改革」の必要性を痛感した次第です。

反面、私たちの置かれた状況から、容易に選択できる課題もありました。

「集中管理か分散管理か」という問題があります。私たちは迷わず分散管理を選択しました。理由は簡単で、集中管理をお願いできる「専門家」がいなかったからに外ありません。こうして沼津高専では「分散管理」を選択しました。

ネットワークの管理方法として「集中管理」と「分散管理」が挙げられますが、両者の違いは、学校全体と各学科・各課の、どの階層が、 直接ユーザ(教職員)の窓口になっているかどうかだけの違いです。高専規模の組織では、どちらの場合もありうるわけですが、どちらが窓口になるかによって管理体制は当然異なってきます。

ネットワークの業務利用という側面からだけ考えると、学校全体で管理する方が望ましいし、そうあるべきでしょう。教育・研究利用という側面からは、学科にその管理の中心をおく方が良いでしょう。 しかし、運用しだいで、学校全体を管理の中心にした場合でも、各科やユーザ個人の自由度はそれなりに保てるものです。

校内LAN活用体制を議論するときに、大変重要なことは「管理という概念には様々な捉え方がある」ことを理解しなければならないということです。「管理」という概念には「ネットワーク機器の管理」等に代表されるような「狭義の管理」と、ネットワークの運用全体を含む「広義の管理」という意味があります。私たちの議論の中でもこれらの概念が混乱して、しばしば「激論」に発展しました。

「狭義のLAN管理」というのは、ほぼ以下に示すような「業務」になります。

  1. 基幹部分に接続する機器へのIPアドレスの交付
  2. インターネット接続の維持管理
  3. 各部署が行うサブネットの管理及び運営に対する技術的支援
  4. その他基幹部分に関する管理業務

これら「狭義の管理」は現在、教官、技官によって構成される校内LANの基幹管理グループによって行われている業務ですが、学内共通の情報基盤の維持・管理業務ですので、事務部の業務の一部になります。しかし、これらの業務を担当するためには幾多の専門技術を必要とします。現状では、これらの業務の多くは事務部で担当できるわけではありません。

「狭義の管理」については、将来の事務部の業務として位置づけるとしても、当面は教官、技官を含む全高専的課題として位置づけ、適切な年次計画の下に事務部における人材養成を行いつつ、順次、事務部へ移行していかなければならない課題でしょう。

こうした全高専的な課題を担うグループを組織し、事務部の要員養成を行い、事務部移管へのプログラムを組み、変更を重ねつつもそれを実行し、絶えず発生するであろう未知のトラブルに備え、高専におけるLAN活用体制を整えて行かねばなりません。何よりも重要なことは、校内LAN活用にあたって要求される高いモラルを利用者すべてに醸成していかなければならないことでしょう。これらは「広義の管理」に属する問題です。

「分散」であれ、「集中」であれ、いずれの管理体制を選択しても「広義の管理」体制をどのようにして構築していくか、という問題から逃れることはできません。

もう一つ、容易に選択できた事があります。それは学生の校内LAN利用に関する管理運営事項です。専攻科、卒業研究、情報関係の授業、授業や実験のレポート提出等で実施されていることを除いては、現在、沼津高専には全ての学生が校内LAN利用できる状況にはありません。従って、学生の校内LAN利用については、その利用環境をどう整備していくか、と言う議論にとどまりました。

学生の校内LAN利用という厄介な問題を先送りした形になりましたが、この報告では「教室での学生による校内LAN利用の管理」と言う問題は含まれていません。しかし、それが大変重要な課題になるであろう事は十分予想できます。

その他、管理運営の課題で、先送りした事項はたくさんありまが、それは前述したようにこの課題が多岐にわたり、それぞれが重要な問題提起を伴なっていたからです。ここでは限られた課題ではありますが、私たちが調査し、検討した事項について報告します。以下では「狭義の管理」も「広義の管理」も区別無く、同時に議論されています。

2.1.校内LANと高専教職員の「意識改革」

校内LANが整備されて、いよいよ沼津高専も「山田メモ」に言う所の高専教職員の「意識改革」をしなければいけない時期に来ているのかな、と言う感が深まっています。

果たして、高専教職員の「意識改革」とは何なのか、それは何時、どのようなきっかけで始まるのか、どのような現象を持って高専教職員の「意識改革」が始まったといえるのか、等々、分らないことが多いのですが、どうやら解りかけてきたところから話を始めたいと思います。

この間、どうも「おかしいな」と感ずることがあります。それは、沼津高専の教官・事務官が校内LANを内線電話や内線Fax.の代わりとして使い出したことです。「これは便利なものだ。」という理解が広まっています。これは当初のねらい通りに事が運んでいる、と思われたのです。それなのに「どこかおかしい」と思うようになりました。

どこがおかしいのかと申しますと、校内LANが内線電話等の延長上にしか位置付けられていないことです。

ここにあるのは「沼津高専という組織があって、それが校内LANでつながっている。」と言う発想です。

これはいわば地動説の世界観です。ここからは、「出かけていけば出来る仕事をEーmailで出来るようになったから、沼津高専が便利になった」という感想しか出てきません。これは意識改革ではない、と私達は思うのです。

こうした意識からは、「大事な情報」については、従来通り、「紙」に書いて手渡そう、という意識からは抜け出せません。securityが必要な文書は、相手に会って直接手渡せばいい、という発想からは抜け出せません。そもそも要求されるsecurityとは何なのか、という発想が生れてこないのです。

必要な意識改革は、校内LANがあって、それが沼津高専と言う組織を作り上げている、という発想を持つことです。いわば地動説の立場に立つことです。すべての「仕事」を全部Networkの中で実現して行こうという発想が「意識改革」につながると思います。

空間的近接性を前提としないで、高専と言う組織が存在しうるかどうか、が問われているのだという意識に立つこと、それが「意識改革」の中身だと思います。

ご存知のように、地上に住む限り、地動説と天動説は何らの違いもありません。プトレマイオスの時代から営々として積み重ねられてきた天動説はすべての星の蝕を予言できるし、地上の暦はこれですべて「決定」出来ます。実際、わずか数十年前までは子供達に地動説の必然性を説く事は至難の業と言わなければなりませんでした。只、天動説に立つ限り、人工衛星を上げようと言う発想は絶対に生れなかったし、そのための努力はなされることはなかったでしょう。
「地上に住む限り」なんの不便も感じないことであっても、そこにコペルニクス的回転を要求する真理は確実に次の進歩を約束するものなのです。そしてそれは、たいていの場合「苦渋」を伴ってきます。

「沼津高専があって校内LANがあるのではなく、校内LANがあって沼津高専が出来てくる。」これこそが必要とされている「意識改革」の中身なのだと思うのです。

校内LANによって、従来の仕事が2割から3割楽になった、と言うのでは校内LANを活用していることにはなりません。更に、校内LANによって、従来の仕事が2倍から3倍、楽になった、と言うのでも校内LANを活用していることにはなりません。

校内LANによって、従来の仕事が10倍から100倍、楽になった、と言えるようになって初めて、校内LANを活用していることになるのではないでしょうか。「改革」期の進歩は log-scale で計らなければならないほど大きなものでなければなりません。そうであればこそ、多少の苦渋は伴っても「改革」は人々によって支持されるものになります。

果たして、どのようにすれば、log-scale に乗るような進歩を実現できるのでしょうか。私達にも解りません。しかし、ヒントはあります。

それは、コンピュータ支援のもとで、人々の協調活動の活性化を図ろうとする試みです。CSCW (Computer-Supported Cooperative Work)と呼ばれています。孤立したパーソナルコンピュータは、個人の仕事を支援する道具ですが、LANでつながったネットワーク・コンピュータは組織としての仕事を支援する道具になります。10人の人達が互いの仕事とその成果を共有すれば簡単に10倍の能力を発揮することができます。100人がやれば100倍になります。

事は簡単に見えますが、実際にはそううまく行かないことは誰でも知っています。

そもそも、仕事を共有する、あるいはその成果を共有する、と言うこと自体が私たちにはなじめない概念だからです。

3人の子供に3つのキャンデーを配ることは誰にでもできます。10人の子供に10個のキャンデーを配ることもそう難しいことではないでしょう。しかし、100人の子供に100個のキャンデーを配ろうとすると事はそれほど簡単ではありません。キャンデーを配り終わるまで、子供たちがおとなしくそこにいるはずがないからです。それに、どの子にキャンデーをわたして、どの子にはまだわたしていないのか、を把握することが難しくなるからです。 それをやるには先ず、10人の子供を彼らがキャンデーを受け取った後、他の9人の子供に9個のキャンデーを配れるように訓練します。それは自分が10人の子供に10個のキャンデーを配った時のやり方を教えることです。そして、彼らがキャンデーの配布を確実に行ったかどうかを報告させ、確認します。配れない子供がいたら、根気強くその子を訓練するわけです。この時、10人の子供たちと自分は仕事とその成果を共有したことになります。こうして、10人の子供に10個のキャンデーを配ると言う仕事を10倍にする事ができます。

別にコンピュータの支援などなくても、この程度のことは誰にでもできます。100人の子供が120人になっても大丈夫でしょう。しかし相手が1000人になると話が変わってきます。こうなると配布する品物(キャンデー)と配布対象(子供達)を管理し、仕事を分担する10人の子供たちとの連絡を確保し、その作業を管理するためにコンピュータが有力な道具になることは理解できると思います。

単純な作業であっても、あるいは作業が単純なほど、コンピュータの支援が威力を発揮します。しかも、そうした支援を可能にするのは、個人の作業を個々に支援するだけのパーソナル・コンピュータではなく、集団による協調作業を支援するネットワーク・コンピュータなのです。

ここで、重要なのは「どの段階でネットワーク・コンピュータ支援が有効になるのか」ということを判断しなければならない、と言うことです。

作業が一定の質と量を超えると、ひたすらに作業を遂行していくより、道具として「本業ではない」ネットワーク・コンピュータの使い方を習熟するために「脇道」に外れることの方が、「本業である作業」の効率を上げることができるようになる「分岐点」が現れます。

高専においては、卒業生に要求される技術者としての資質の高度化、専攻科の設置、等が進行する中で、要求される教育の質の向上とそれに付随する事務量が、この「分岐点」を超えつつあります。

高専における校内LAN利用をどう円滑に進め、その活性化を計るか、と言う課題は、今日、高専に求められている教育の質をどう把握するか、と言う問題意識がなければ進展しない問題です。ここにこそ「山田メモ」に言うところの「意識改革」の必要性があるのだと思います。

参考文献:「情報フロンティアシリーズ(情報処理学会編)」の「グループウェアのデザイン」(1994, 共立出版)

2.2.校内LAN管理運営組織の位置づけ

校内LAN 利用に関しては、利用に関する方針を出していくことと、それを裏付ける技術とが非常に密接にからみます。したがって、意志決定機関と現場を完全に分離してしまっては、ことが進み難くなります。

校内LANをどう活用していくかは、学内の意志決定機関において諮られるべきもので、そこで決定された事柄を実行に移していくのが「現場」の仕事です。しかし、意志決定機関でも「何が実現できるのか」が解らない状況で「意志」を決定する事は出来ません。

「これこれの事柄を実現してほしい」という要請に対して、「現場」からは「それは出来ません」という返事があれば、その要請事項は実現しなくなるわけです。実は要請事項の実現は「このレベル」で実現してほしい、と言うことであれば、実現できたかもしれない場合があります。要請の仕方も、その要請をほぐしていって、実現可能レベルにまで持ってくる仕方も、良く分っていなければ校内LANを活用できない事がたくさんあります。そういう意味で、校内LANの管理運営にあたる組織は、現場と意思決定機関を直結するものでなければなりません。

従って、校内LAN管理運営組織は第1に高専の意思決定機関に含まれていなければなりません。第2に校内LAN利用を円滑に行うためのスキルを持った人たちが含まれていなければなりません。

本プロジェクトはちょうど沼津高専における校内LAN管理運営組織の雛形になりました。それは、学校長、主事、学科等主任、事務部長、課長によって構成され、オブザーバとして各科教官、技官、事務官が参加して、このプロジェクトで提起された課題を調査し、検討してきました。オブザーバはボランティアですが、本プロジェクトへの参加意志の明確な人が各学科等主任、各課長の推薦を受けてプロジェクト委員長である学校長が任命する、と言う形を取りました。

沼津高専では校内LAN活用のために何が必要か、短期的には何が実現可能か、長・中期的にはどのような展望を持つべきか、と言う事が、メーリング・リストを通じて議論され、実験され、決定されていきました。

2.3.校内LAN管理運営組織は何をするべきか

E-mailは確実に届いているか、公開しているWWW資料は学内外のどこからでも見えるか、非公開資料はアクセス制限がかかっているか、等々をチェックして、不都合があれば、対応策を考えて行動しました。この場合、校内LAN管理運営組織が民間回線を確保しておくのが理想だと思います。

沼津高専の公式HomePageの管理については何処までを庶務課が対応して、何処から先を各学科責任とするか、学内掲示板はどのように運用するか、役割を決めて実行に移しました。

外線接続回線の容量アップに関する検討と実現計画の策定等には予算の問題が絡みます。原資の確保には当然、各学科の理解と協力が必要です。実現のためには事務部が文部省、学情、ノード校と折衝しなければなりません。そのために必要な資料を事務部に提供する事も校内LAN管理運営組織の仕事になります。

学校行事予定表はいつまで、誰が作って、何処へ貼り付けるか。通常と試験時の時間割はどうするか、その決定過程をE-mailでやるのがいいのか、学内掲示板にWWW資料として貼り付けてやるのがいいのか、等々について実験しました。

学生・専攻科生の校内LAN利用環境整備に「不熱心」な学科に対しては、その必要性と重要性を訴えて学科の意識改革をやってもらいます。勿論、反発はあります。そこを粘り強く説得していかなければなりません。実際に専攻科教育に校内LANを使って、学科毎の取り組みの違いから発生する専攻科生のレベルの違いをデータとして提供してもらいました。

SINET からのネットワーク関係の情報(SINETノードの停止、新設サイト、ネットワークトラブル)と、IPCONNECTION ML (日本のネットワークプロバイダの ML)からの、主にセキュリティホールやコンピュータウイルス関係の情報を全ユーザに伝達する。校内LANに必要なアプリケーションソフトを紹介する。学科のLAN運営に有効な文献を紹介する。ユーザーのスキル・アップ、モラル・アップに関連する情報を流します。

事務部にはE-mailに適したプレーンテキストを使って文章を出すように依頼しました。回覧文章はWWW資料にして学内掲示板に張りつけてもらうように依頼しました。文章は全学共通のワープロソフトで送ってくれるように依頼しました。これは、何度も繰り返さなくてはなりませんでした。今も繰り返しています。

ブラウザのバージョン・アップや個人サーバの立ち上げの手伝いに学校中を走り回りました。

年度の事務官の異動に伴うIPアドレスの変更、メーリングリストの更新もやりました。

校内LAN管理運営組織はおよそ校内LANに関する事なら、ありとあらゆる事をやらなければなりません。

本プロジェクトがやった事は、そして期待される校内LAN管理運営組織がやらなけらばならない事は、メーリングリストの管理、校内掲示板用のサーバの管理運営、学内LAN回線の接触不良個所の発見、等々の技術面だけではなく、実際にはネットワーク・アプリケーションの導入企画やその運用プロモーションまでをもすべて守備範囲とするものです。

勿論、そんな事が少数のグループでできる訳がありません。沼津高専が「分散管理方式」を採ったのは正解だったと思っています。

校内LANに関するユーザーの理解も不可欠です。校内LANは従来の電話・FaxーSystemに比べて、それほど「確実」なSystemにはなっていません。勿論、それは十分実用段階にはなっていますが、時々、不都合が生じて、確実な通信が阻害されることがあります。

原因は2つあって、一つは、Systemそのものの不十分さがあると言うことです。Systemは、時々、原因不明でDownします。その都度、業者に連絡して、復旧してもらいますが、ある程度は電話・FaxーSystemに比べて「信頼性」が落ちるSystemであると言うことを使用者(user)が理解して頂きたい、と言うことです。System がDownしても、「慌てず騒がず、(多少は文句を言いつつも、)じっと耐える」努力が使用者側に要求されている最も重要な「技術」であります。

こうした了解の下でのみ、校内LANの管理運営組織の活動が可能になります。

もう一つは、使用者がこのSystemの限界を知らないで、過信した使い方をして、失敗するというケースがあります。実際、本プロジェクトでも大きな添付ファイルを送って、一部欠損したという「事故」が起こっています。これについては、使用者がE-mailの限界を知ればいいことです。しかし、校内LAN管理運営組織は「E-mailにはこれこれの限界がありますよ」と言うことを使用者に知らせておかなければなりません。勿論、「ちゃんと知らせてあるのに、注意書きをろくに読みもしないで、これが出来ない、あれが出来ないと文句ばっかり言ってくる使用者」は沼津高専内に一杯いることも校内LAN管理運営組織は十分知っておかなければならないことの一つです。

2.4.公式HomePageの管理運営

沼津高専においては、「公式HomePageは学校要覧に次ぐ本高専のトップ・ドキュメントである」との位置付けを行っています。それはやがて学校要覧に代わるものになる、との認識が一般的です。従って、その管理は学校要覧と同じく、庶務課が担当しています。

学生会や寮生会については公式HomePageには参加させない、という合意があります。これはSINETの目的・趣旨に沿ったもので、そうした学生の自主的な活動については、別途「学生会・寮生会掲示板(Student Board)」が必要であるとの認識に立つものです。、それらは民間プロバイダーを利用したネットワークの中で行われるべきものだと考えています。

学校要覧がそうであるように、庶務課が責任を持つのは、学校全体の紹介に関する事項です。具体的には公式HomePageの第2Page目までが庶務課の管理対象になります。

入試関係をはじめとする教務関係の掲示は副校長(教務主事)が作成します。教務委員会等での承認が必要である事は言うまでもありません。校長補佐(学生主事、寮務主事)が作成するPageは今のところありません。該当事項が出てくれば教務関係事項と同様に扱われると思います。

同様に、各学科に関する事項はすべて学科の責任で作成しています。管理責任者は各学科の主任という事になります。庶務課は各主事、各学科主任から、要請のあったPageを公式Pageにリンクを張ります。但し、庶務課は当然の事ながら第2Page目までにリンクを張る事に関しては学校長、事務部長の決済を必要とします。

公式HomePageと学校要覧の違いは、前者が時期にかなった情報を提供できる、と言う事です。その意味で、全ての事項について学校長、事務部長の決済を待っていたのでは情報の新鮮さが失われてしまいます。そこで、緊急を要する事項や、特に異論がないと判断される事項については、庶務課長の判断で「新着情報」のPageへのリンク要請に限り、事後に決済を得るという方法を取っています。「新着情報」のPageにリンクされた事項は、月が変わると「イベント情報」のpageに移されます。そこで「掲載削除」要請がない限り1年間掲載されます。年度が替わると公式HomePageはすべてCD-ROMに記録されて庶務課で保管される事になります。

この他に、沼津高専の公式HomePageには「沼津高専周辺 (静岡県東部) の地域情報」のPageがあります。これは、沼津高専近隣の地方自治体の紹介です。これについては、沼津高専の教官が、例えば「地域とインターネット」というようなテーマでの研究対象として取り上げ、当該自治体から公式に要請があり、かつ学校長が許可を出したものに限り掲載する、という立場を取っています。

以上が沼津高専における公式HomePageの管理運営の実状です。

公式HomePageの管理運営に関しては、新鮮さを失う事なく(HomePageは野菜みたいなもの)、厳格な管理を行う(HomePageは缶詰めみたいなもの)と言うことが求められますが、これはなかなか難しい課題です。沼津高専では、学科レベル以下で各教官の創意工夫を生かしたPage造りをやっていただこう、という考え方が定着しつつあります。学生のHomePageについても責任の所在を明確する(教官が責任を持つ)という前提で科目担当教官、卒研指導教官の判断に任されています。

端的に言えば、「まぁ、学校の公式HomePageはぼちぼちやってもらって、学科レベルや、個人レベルで自由に情報発信すればいいじゃないか」とは言いつつも、「あなたまかせでない分散的な LAN の運用管理」を実現して行きたいものだと思っています。

そして「高専が活きている、活動している」という情報発信の場としての公式HomePageの発展を望んでいます。

2.5.WWW資料としての公文書の仕様と作成の道具

公式文書の仕様として求められている事は以下の3つの文書を用意する、と言う提言です。
(1)text file版
これは、browserを持たない人にも学校の情報を送るためです。写真も不要です。申込書類などは、この書式で書くべきです。この形式ならば、WWWでもE-mailでも送ることが出来ます。

(2)HTML版(HTML2.0)
これは、現在、「日本の世の中では、Netscape2.0jがまだ使われています」から、それを標準にしています。公式文書は、内容の方が大切であり、pageの飾りは特に要りません。表現の工夫は必要ですが。写真は、必要最少限にとどめ、sizeも小さくします。link先に大きな写真やvideoなどがあるのは構いません。「自分でお金を払って、沼津高専を見に来てくれる人」に対して、ちゃんと情報提供する配慮が必要だと思います。

(1)(2)は転送効率も考慮して、Zip fileも用意した方がいいでしょう。

(3)HTML版(HTML3.0以上),Java,VRMLなどを含む
これは、いずれは公式文書の情報発信に使われるものであり、当面は学内向けになります。最新のWeb表現技術を用いて、いろいろと表現方法・情報転送技術を試みる。特に、JavaやVRMLは重要です。HTML3.2(通称)で書かれた文書は、1997年4月くらいから徐々に(2)の位置に置かれていくと思います。この(3)は、研究室や授業での取り組みにも関連します。特に、学生の力に依存して発展する部分が多いと思います。

文書作成の道具についての検討です。
HTML文書を書くためには、いま、

(1)text editor
(2)HTML editor(a)
(3)HTML editor(b)
(4)変換tool付きのeditor(HTML fileに自動変換)
があります。慣れた人は、(1)を使う場合があります。しかし、HTML文法を知らずに始める場合には、(2)や(3)の方がいいでしょう。

(2)は、HyperEditor4.0やhtml22などのHTML editorです。基本文型のtemplateにmenu形式でtagを選んで張って行きます。これを使って、一通りHTMLを習得するのに2週間くらいです。これは、学生の演習などにもうしばらくは必要でしょう。できた文書は、別のtool(FTPなど)でserverに送ります。

(3)は、NetscapeGold3.0のようなものを指しています。tagのことはあまり知らなくても、display画面上で文書作成・編集できます。そして、できた文書は、on-line publishing機能を用いて、serverに送ることができます。 (4)では、Microsoftの製品に見られるように、Wordなどで作成した文書をHTMLに変換してくれます。また、WindowsNTのserverとlinkさせて、簡単にpublish出来るような体制(環境)が、いま、整いつつあります。

(4)の部分では、「文書作成からWeb serverの構築・batabase化まで」がかなりの速度で進んでいます。その状況を見越して選ぶならば、WindowsNT/serverとWindows95(97)で構築したnetwork systemが一つの標準となると思います。これは、事務部とか学科での事務利用に向いていると思います。

将来のWebは、HTMLから別の表現技術に移行します。いま、注目されているのはJavaです。また、TCP/IPを使う限りあるいは教育の分野としてはUNIXをbaseに考えることになると思います。

2.6.アクセス制限とイントラネット

本プロジェクトの進行中、管理運営に関して多かったのは「アクセス制限」に関する質問と議論です。校内LANやインターネットの目的はどれだけ多くの人に情報を提供するのか、という事にあります。それが、全く逆の反応が出てきたので驚きました。中にはセキュリティと絡む議論もありましたが、の問題ではなく「アクセス制限」そのものへの関心は、これも驚くべき事に、HomePageを開いて情報発信を活発に行っている人達からではなく、ほとんど情報発信を行っていない人達の方が高かった事です。これは、インターネットの「大海」に対する「広所恐怖症」とも言うべき現象です。高所恐怖症が「高さを認識できない」ことが原因であるように、インターネットの広さを認識できない事から不必要なLANの「アクセス制限」を気にするのだと思います。

しかし、慣れていない人に「いきなり世界に向けて情報発信せよ」というのも酷な話です。その緩衝として、アクセス制限がかかったWebのゲレンデが必要です。

またプロジェクトや委員会等では、審議途中のWWW資料もあるので、一定の制限範囲内に資料を置くために、アクセス制限のかかったWebの「場所」が必要になります。議論を「ブラウザで見てE-mailで討論する」方式で進行させるのは非常に効率的なやり方です。それに「いろいろと技術的な課題に取り組んでみる」のもゲレンデならではの事でしょう。
更に、「高専の構成員には、年齢的には中等教育機関にあたる学生が含まれる」ことを考慮しなければなりません。

本プロジェクトは以上の観点から、プロジェクト用にサーバを立ち上げ、議論を「ブラウザで見てE-mailで討論する」方式に切り替えました。討論に資するWWW資料は各自の個人サーバか学科のサーバに貼り付けてもらって、プロジェクトのHomePageにリンクするという方式を採りました。この中で、私たちは、幾つかの「アクセス制限」に関する実験を行いました。

アクセス制限をかけることを前提とした、ホームページ群を 「イントラネット」呼んでいます。実験はこのイントラネットを構築し、指定した特定のグループしかアクセスできなくなるかどうかを確認する方法で行われました。

実際やってみて感じた事は、学科におけるイントラネットの中身は、必ずしも高専内部に情報を制限する必要のないものが多いと言う事です。

要するに、WWWの利用は、事務の業務利用でない限り、閉じた利用を前提にそこから徐々にオープンしていくのではなくて、オープンであることを前提にして、必要なものだけをクローズしていくとういスタイルを取る必要があります。それが、従来のインターネット的なやり方ですし、現在でも学術・情報・教育機関においては、もっとも自然なスタイルではないかと思います。

事務部のネットワーク利用は、その仕事の性格上、内部での情報交換、データベースの作成・利用すなわちイントラネット的な利用が中心となる部署です。もちろん対外的な情報発信もありますが、現在このプロジェクトで検討されているような事務利用は、完全にイントラネット的なもでのす。公式HomePageとは別の事務部のPageには業務連絡用に発信されたE-mailの原稿が貼り付けてあります。これは外部に向かって発信する必要のないものです。

大学や高専においては、企業の様なインターネットへ発信する情報=公式情報、イントラネットの情報=非公式情報という図式でやってしまうと、外への情報発信は、全く中身の薄いものになってしまう恐れがあります。企業の様に、開発中の新製品に関する情報がたくさんあるわけではありません。Internetに情報を発信し、それによって市民権を得る。その意味で、HomePage作りは、住民登録票と同じという考え方が基本的だと思います。
そして、「相互に情報発信・情報提供する」という考えを基本に据えなければ、「情報の共有化」という方向は出てきません。Internetについての基本理念としての「公開」が前提になると思います。

その意味で、アクセス制限されたWebのゲレンデは「情報の公開範囲をそれぞれが決められる」ように「リンク集」に徹するべきだ、と思います。

もう一方、初等・中等教育機関の場合には、無制限にInternetの情報を内部に流しては困るという事情があります。沼津高専の場合には情報処理教育センタの役割を低学年のWeb教育に絞り込み、そこではインターネット上の自由を一定程度制限して教育する、と言う方針が採られました。
それが、各学科の責任で、高学年学生の校内LAN利用環境を作らなければならない、と言う議論に発展していった経過があります。この経過については、第3章 校内LANの教育利用 で改めて報告します。


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