KLAN2最終報告書:
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3.3.学科教育

学科教育へのLAN活用は、教材作りから始まりました。教室でのLAN利用環境は整っていないのですが、教材を「ファイル化」しない限りLANの教育利用は始まらないからです。

3.3.1.「金属材料」授業の教材作り

報告者:井上機械工学科講師

金属材料の授業では金属の顕微鏡組織写真や金属結晶模型図などが重要な役割を果たします。従来はOHPシートに写真や図をコピーして授業で使っていたのですが、OHPシートでは持ち運びや保管に大変気を遣います。かなり気をつけて保管していないと使用のたびに劣化します。大体、1年も使うとシートに傷がついたり、染みがついたりして使い物にならなくなります。そこで、写真や図だけでもJpeg-fileにして、PC対応のプロジェクターを使って授業に使おうと考えました。OHPは内容の修正・訂正の度に新しいものを作成する必要があります。一方、このプロジェクターを使用する方法であれば、これらの作業は非常に簡単に行えますし、内容も常に更新することが可能です。

OHPでもそうなのですが、こうした教材を映写する時には教室を暗くしなければならないので、学生がノートを取りにくいという事情があります。そこで従来は写真や図だけに絞ってOHPを使っていたのですが、最近は偏光スクリーンができて教室を暗くしないでもよく見えるようになっています。現在、偏光スクリーンはすべての教室に設置されていませんが、どの教室でも偏光スクリーンとPC対応の液晶プロジェクターが使えるようになると写真や図だけではなく、数式や文章の入ったWWW教材が教室でも使用できるようになると思います。 さて、これから画像処理をやってみよう思います。まずは、テストページとして、試作したHPの中から写真を貼り付けたものをおいてみますのでご覧ください。

今後は、出来上がった教材を先ず自分のWeb serverで提示し、教官の皆さんのご意見を伺いながら修正を加えて、その後最終的出来上がったものを学科のserverに移して行こうと思います。

[klan2委員1コメント]

確かに、Photo.htmlの「金属顕微鏡組織写真」を拝見しました。近い将来、「学生に人気のあるWeb server」の先生は?という時代になるかも知れませんね。

[klan2委員2コメント]

PC対応の液晶プロジェクターは学生課に1台、電子制御工学科に2台あります。偏光スクリーンは電子制御工学科に100インチスクリーンと35インチスクリーンがあります。最近は巻き取り式の偏光スクリーンが出ています。学生課に装備してほしいですね。]

3.3.2.情報処理演習の教材作り

報告者:鄭 電子制御工学科助手

私は昨年度、本高専に赴任した助手です。私は機械工学科の出身で、数値計算や論文の作成のための断片的なコンピュータ知識しか持っていなかったので、本高専の電子制御工学科で行われている教育内容に接して戸惑いを感じとても不安でした。赴任当初、学科内で盛んに議論されていたインターネットに関する知識もゼロに近い状態だったので、最初の2ヶ月は学科の先生方に聞きながらインターネットに関する基礎知識の習得に励みました。 こちらの生活に少し慣れてきたと思ったら、今度は「来年はJava言語の情報処理演習を担当してください」と言われて「むちゃなことを平気で言うな。この学科は」と思いました。「こちらに来る前の話しと違うじゃないか」と思い、相当悩みました。 自分の研究もやらなくてはいけないのに、それどころか「自分の専門とぜんぜん違うこと」をやらされるはめになったからです。それまでプログラム言語に関する知識も乏しく何からどう進めていけばいいのかまったくわからないまま、とにかくJavaの勉強に取り掛かりました。それがJavaを始めたきっかけです。

そうこうしているうちにJava言語の教育やその活用について活発な議論が行われていることも知り、本格的にJava言語を勉強し始めたのが去年の6月ごろです。成果物をHPに貼り付けてMLに流し、興味を持っておられる先生方からのアドバイスをいただきながらJava言語そのものの教育やJava言語の教育利用を考えてきました。それらの成果物は現在、3年生後期の実験、4年生の情報処理演習、5年生の実験などで利用しています。

3.3.3.ロボコンのホームページ

報告者:長澤電子制御工学科助教授

いま、ROBOCONのホームページ公開に向け作業を進めています。試合の模様を動画で見ることが出来ます。暫定版ですが
http://moon.denshi.numazu-ct.ac.jp/~robot96/
を、見てみてください。ご意見など頂ければ幸いです。

3.3.4.工学実験のレポート提出

報告者:望月電気工学科助教授

D科4年生の実験報告書をHTML化して提出させました。私のホームページに貼り付けましたので、ご覧ください。BACKなどは後で手を加えたいとおもいます。

実験レポートのHTML文書での提出は学生にコピーを許すことになります。従って、採点は各実験班毎に面接試験をやって評価しています。しかし、学生が先輩や先行班の実験レポートをコピーして提出するということはレポートをHTML化して提出させるかどうかとは関係のない問題だと思います。

[klan2委員1コメント]

拝見しました。今回は、壁紙を付けたり、frame versionにしたり、なかなか凝っていますね。HTML表現技術の方は、(まあまあに)よい点数を付けたやって下さい。ちゃんとtagを使えばいいのに...、と思うところもありますが。 しかし、実験dataは、ちょっとお粗末ですね。OP ampの回路設定がうまくないのでしょうか? また、4年生にもなって、暗算で解けなければいけないような微分方程式を解説しているpageがありますが、これは外しておいて下さい。実験班のlevelが、そのまま出ています。]

[klan2委員2コメント]

実験レポートをHTML文章で提出させることは、学生が「他人のレポートを写す」と言うことが前提になります。世界中の関連文献をとってきて、それと自分たちの取った実験データとの関連を議論してもらう、と言うことになります。

学生が提出したレポートを実験のHomePageに貼り付けて、誰もが評価できるようにしよう、と言うのがWWW上での実験レポート提出の意味だと思います。学生が提出する1ページのレポートには100ページの文献から得た情報が圧縮されている、と言うことになりますね。そうでなければ評価されない。

これはむしろ、こちらとしては「写す」ことを奨励しなければならないですよね。一つの実験に関わる膨大な情報の中から、意味のある情報を引き出して、レポートを提出しなければならないわけですから、学生は大変ですね。大いにPCのコピー機能を使わなければなりませんね。

3.3.5.「哲学のホームページ」について

報告者:野沢一般科目教授(噂の哲人)

このHPを作ろうと考えたのは、哲学では毎年12月を締め切りにして5年生に小論を書いてもらっているのですが、それがなかなか面白く、何かの形で公表できないかと以前から考えていたのですが、印刷は金がかかるし、どうしようと思っていたところにHPという新メディアが登場したので、飛びついたというわけです。

今回、実験的に掲載してある3つのリポートは、これまでファイルとして提出されたもので、手元にあったものです。掲載した理由はそれ以外にはありません。

3つのリポートは、提出の仕方がそれぞれ異なり、I君のはメイルとして、S君のはメイルの添付ファイルとしてT君のHTMLファイルはFDによって提出されました。学生たちには、学科内ならともかく、一般科目までメイルで送って正確に着くのか不安がまだあるようです。

T君のHTMLファイルはアンカーを最後に小生がつけた以外、他はすべて、本人が作ったままのものです。

他の2人のTextファイルには、エディタで<HTML>と<PRE>の2つのタグと アンカーを付けただけです。実に簡単です。

この簡便さがHTMLのよさだと思います。これなら、「だれでもできる」という感じがしませんか。一方、その道を極めようと思えば、奥が深いところもあり、(そのあたりは、私には分かっておらず今後の課題ですが)本当に、HTMLはよくできていると思います。

HPによる学生の学習成果の発表の場が簡単に作れるということは、これで分かっていただけたのではないかと思っています。このようなHPが学生の励みになってくれればいいですね。

今年度の5年生の哲学レポートがほぼ出そろいました。「哲学HP」に公開することを希望しない学生や原稿用紙に手書きで提出した学生もいたため、現在「哲学HP」には5年生のうち約半数100名強の学生の小論が掲載されています。

12月は5年生にとって卒研の追い込みなどなにかと忙しい時期で、小論作成は負担になるようですが、今年もなかなかの力作がいくつかあります。普段の学生の姿からは窺い知れないことば、表現に驚かされたり、感動させられたりします。

学生にとってはちょうど良い卒業文集になっているようです。 彼らが卒業後も振り返ってみられるよう、数年間は公開しておきたいと考えています。

URLは次の通りです。 http://lapc01.ippan.numazu-ct.ac.jp/a/nozawahp.htm

今回のリポート提出の形態はクラスによってかなり違ったものになりました。次のような結果です。

機械工学科:紙対ファイルの比が、2対3。紙の大部分が手書きでプリントアウトは1通のみ。ファイルの大部分はFDによるもので、メイル利用は4通のみ。いずれも同一学生のパソコン通信で送られてきた。

電気工学科:紙対ファイルの比が、3対4。紙の2/3が手書き。ファイルの2/3がメイル。

電子制御工学科:すべてメイルによる提出。

制御情報工学科:1通手書き、他は全てファイル。メイル利用は4通のみで、他はすべてFDによる提出。

物質工学科:紙対ファイルの比が4対3。ファイルはFD1通を除いて他はメイル。紙は約半数が手書き。

この結果を見ると、利用環境の違いが実際の利用状況にもろに反映していることがわかりますね。

学科を問わず学生が共通にネットワークを利用できるスキルと環境を、どこまで要求しどう実現するかを考えないといけないことがよくわかります。どの学科の学生もメールでレポートを提出できるようにしようということであれば、それに応じた環境を作りと講習を学生に対して行う必要があるでしょう。

現状でいえば、電子制御と制御情報以外は、独自に演習室をもっていないので、それ以外の学科では学生の利用環境は、センターしだいということになります。率直なところ現在のセンターの利用環境(ソフトウエア環境)はその意味で決して充実しているとは思えません。

3.3.6.一般科目教官の卒研指導

インドネシアからの留学生、Davit君が卒研生になりました。彼にとっては日本語の習得も重要な課題の一つです。そこで、卒研指導教官は、藤枝一般科目教授に、藤枝教授が授業で使っている地理学教材の一部のHTML化とHomePageの作成をDavit君にやらせてもらえないか、と言う依頼をしました。藤枝教授はこの時点ではHTML文書については何も知りませんでした。勿論、HomePageの作り方に関する知識も技術もありませんでした。しかし、教材をWWW教材にすることに関しては強い関心を持っていました。HomePageに関する知識と技術は専門学科の方から提供する。教材の構成と中身については藤枝一般科目教授が提供する。それらを用いてしっかりした日本語を身につけつつ、卒研テーマの一つとしてWWW教材を作成するのが留学生Davit君の仕事です。一般科目教官のWWW教材の作成と、留学生指導と卒研生指導、一石三鳥を狙った企画です。

結果は大変うまくいきました。出来上がった教材は藤枝教授のHomePageに「富士山のPage」として貼り付けられています。藤枝教授はHTML文章とHomePageの作り方に関して、一定の知識を身につけました。Devit君は充実した卒研の成果を上げて、希望通りの大学に編入学していきました。

この「実験」で、私たちはWWW教材の作成を一般科目教官と専門科教官が協力して行えば、技術的な理由から参加できないでいる一般科目教官が、校内LANの教育利用において積極的な役割を果たすことができることを実証しました。

従来、沼津高専では一般科目教官が5年生の卒研指導に関わることはほとんどありませんでした。理由は、一般科目教官の授業の持ち時間が多くて卒研指導が過重な負担になること、専門学科と共通するテーマを設定しにくいこと等が挙げられます。校内LANはこうした障害を取り除いて、一般科目教官の負荷を増やさないで、卒研指導にも参加できる可能性を提供してくれたと、私たちは信じています。一般科目教官の卒研指導参加が同時に一般科目教官のWWW教材作成に結びつき、校内LANの教育利用にはずみがつくことを期待しています。

3.3.7.校内LANの教育利用に関する一般科目教官からの期待

報告者:谷 一般科目教授

学生に提供すべき環境として、一般科目は一般科目のコンピュータ演習室を実現できないかと考えております。

再評価を受ける学生の自習、あるいは自発的な補習やより高度な内容の学習を希望する学生の個別学習の場としてコンピュータ端末が最適だという声が上がっています。

[遠藤 一般科目助教授のコメント]

今年度の再評価(私が受け持つ ie. 昨年度以前に私が赤点を与えた学生対象)の実施要項を http://lapc10.ippan.numazu-ct.ac.jp/sai/sai97.htm に張り付けました。問題の情報(問題そのもの)へもリンクが張られております。学生への連絡は楽ですし、学生も私が部屋にいる、いないを気にせずに再評価に関する情報を入手できます。]

まだ、体制は整っていませんが、専門科との共同作業で(たとえば藤枝先生のHP作成のように、表示するテキストの内容は一般科目が提供し、その表示や構成の方法は、学生に追究させて、そこに新しい技術を盛り込むことで、情報系の学生の卒研テーマにするとか)学生にとって使いやすい、魅力あるハイパーテキストを、数学、英語、国語、物理、化学、地理、歴史などの教科毎に作れば、非常に教育効果は高いと思います。

また、通常の授業でもパワーポイントなどでの教材作りが進めば、従来、黒板を前にして行われていた授業が端末を利用して実施できるようになります。うまく組み立てられれば、このような授業は、1対多でありながら、1対1であるかのような効果を生みます。また、これからは全国的に電子化された教材が蓄積されていくでしょう。 それらを利用する授業もありえます。

こうした授業が容易に行える場として情報教育センターとは別の演習室が一般科目にも必要だと考えます。


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